学校法人の法人税を把握するうえで覚えておくべき3つの特殊事項!
この記事のポイント
  1. 学校法人の法人税のポイントは3つ!
  2. 法人税の課税の範囲を知ろう(本当に非課税で大丈夫?)
  3. 法人税申告書の金額の集計の仕方(別建て管理で経理処理されている箇所があるかも…)
  4. みなし寄附金(所得の半分は損金になる)

覚えておきたい法人税のポイントは3つ!

法人税と言えば、一般企業に課される国税のように思われがちですが、学校法人も当然法人税の課税対象になります

ただし、学校法人では、「収益事業」から生じた所得のみが法人税の課税対象になるなど一般企業とは全く異なる対応をしなければならない場面がいくつかあります。

そして、学校法人の公益性に鑑み、学校法人の法人税には、税金を安くするための制度がたくさんあります

しかし、一般的にみるとどうしてもマイナー事項になってしまうため、詳しく記載された解説本などを見つけることは難しいです。

そこで今回は、知っておくと便利な学校法人の法人税の特殊事項を3つ紹介します。

学校法人の特殊事項

学校法人の法人税で知っておくと便利な特殊事項は以下の3つになります。

学校法人の法人税の特有論点
  1. 法人税の課税範囲
  2. 私立学校法と法人税法の収益事業の違い
  3. みなし寄附金

法人税の課税範囲

学校法人では、各事業年度の所得のうち「収益事業」から生じた所得についてのみ法人税が課税されます

学校法人は一般事業会社と異なり、営利を目的としていないため、「収益事業」から生じた所得(=営利目的で行った事業から生じた所得)のみが法人税の課税対象になります。

つまり、学生生徒納付金収入などの教育研究事業(本来学校が行う事業)から生じた所得については、法人税が課税されないことになるので、学校法人の所得のうち大部分の所得は法人税が非課税になります

ただし、売店や食堂等の運営や、駐車場の貸し出しなど、法人税の課税・非課税の判断が非常に微妙になるケースもあります

我々が会計・税務業務を依頼されて学校法人にお伺いさせて頂くと、なぜ学校法人側で法人税を非課税と判断しているのか、不明なケースもあるのが現状です

非課税になった理由が時間の経過によって忘れ去られている場合(過去に一度検討されている)や新しい事象で検討が追い付いていないケースが考えられますが、もしあなたが理事・監事・経理責任者等であるならば、法人税が非課税になる理由を明確にして記録として残しておいた方が良いでしょう。

教育研究事業と収益事業の法人税課税の違い

私立学校法と法人税法の収益事業の違い

学校法人で登場する「収益事業」には、私立学校法の「収益事業」と法人税法の「収益事業」の2つがあります。

ただし、税金の話しをするときに必要なのは、法人税法の「収益事業」だけです。

法人税法の「収益事業」から生じた所得(=営利目的で行った事業から生じた所得)のみが法人税の計算に関係し、私立学校法の「収益事業」は法人税の計算には関係ありません

私立学校法の「収益事業」を詳しく説明すると法人税法の理解の阻害要因になりますので、ここでは深く触れませんが、私立学校法の「収益事業」を学校法人が行っている場合は、通常学校法人が作成している、資金収支計算書・事業活動収支計算書・貸借対照表以外に「別建て」で損益計算書・貸借対照表を作成しなければならないとだけ覚えておいてください。

法人税の課税対象になるのは、法人税の「収益事業」のみなので、別建てで損益計算書などがあっても、通常部分の計算書類と別建て部分の損益計算書などの両方を加味して、法人税の申告書を作成するだけになります。

まとめると、私立学校法の「収益事業」があれば、学校法人は会計帳簿を分割している可能性があり、法人税の計算上、通常の帳簿と分割した帳簿の両方の帳簿を参考にしないと法人税の申告書は作れないと覚えておいてください。

私立学校法と法人税法の収益事業の違い

みなし寄附金

一般的に、収益事業から稼がれた所得は、本来の学校法人の事業である教育事業に使われることになります。

そうすると、収益事業から稼がれた所得に対して、そのまま法人税を課すのは、学校法人にとってあまりに酷だと考えらます。

そこで、考案されたのがみなし寄附金という制度です。

法人税の収益事業から稼がれた利益相当額を法人税の課税対象でない教育事業に寄附する処理をすれば、所得の金額の50%を上限として、損金(=経費)算入が認められます(≒法人税の納税額がかなり減少します)。

みなし寄附金と法人税額の関係

まとめ

学校法人を取り巻く会計ソフト・税務ソフトの発達により、法人税の申告書自体はだれでも作れるようになってきています

ただし、上記3つの特有論点を知らないと、①課税対象を間違えて追徴課税を受ける、②法人税対象の集計範囲が分からず間違った申告書を作成してしまう、③みなし寄附金の処理(別表14(2))を忘れて多くの税金を支払ってしまうということになり兼ねません。

学校法人の法人税のキモになる箇所ですが、本などでは意外とまとまった説明がされていない箇所なので、今回は記事にさせて頂きました。