
- 学校法人の法人税の課税範囲は予想以上に広い
- 「なぜその事業が法人税の課税対象にならないのか?」の理由を事前にきちんと整理することが重要
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法人税の課税範囲
学校法人が収益事業を行う場合、法人税が課税されます。
収益事業とは、①物品販売業・不動産貸付業・席貸料などの政令で定める事業(34業種あります)で、②継続して、③事業場を設けて行われるもの(法人税法2条13項)です。
よって、学校法人が上記の収益事業を行っている場合、法人税の計算を行い、申告・納税をしなければならないことになります。
定義だけを書くと非常に簡単なのですが、実務の現場では、学校法人の法人税の課税対象は非常にグレーゾーンが多いと感じます。
経理担当者の話しを聞いて、法人税の課税対象かどうかを考えると、内容の整理の仕方次第でどちらでも考えられる事例もあります。
そこで、今回は法人税の課税対象で間違え易い事例を1問1答形式で見ていきましょう。
- 計算書類上、どの科目が収益事業になりやすいの?
- 事業活動収支計算書の始めにあるの学生生徒納付金収入や手数料収入は教育研究事業に分類されるので、収益事業にならず非課税です。
事業活動収支計算書の終わりにある①付随事業・収益事業収入や②雑収入は、収益事業として法人税の課税対象になり得ます。
例えば、食堂・売店などの収入は付随事業・収益事業収入の補助活動収入に分類されますが、法人税法では、物品販売業・飲食業として課税される可能性があります。 - 校舎、体育館、グランド等の貸付は法人税の課税対象になるの?
- 校舎・体育館・グランド等の貸付は政令で定めれている不動産貸付業にあたり、法人税の課税対象になります。
ただし、たまたま一時的に貸し付けて謝礼を貰った場合は、法人税の課税要件の「継続して」には当たらないため法人税の課税対象にはなりません。
「継続して」の要件が重要になりますが、判断が難しいところでもあります。 - 学生食堂は法人税の課税対象になるの?
- 学生食堂の運営方法には大きく分けて2通りの方法があります。
①一般の業者に経営を任せて、学校法人側は売上高の一部を徴収する方法、②学校法人自ら飲食の提供する方法です。
①一般の業者に経営を任せて、学校法人側は売上高の一部を徴収する方法の場合は、仲立業として、収益事業に該当し、②学校法人自ら飲食の提供する方法の場合、料理店業その他の飲食店業として収益事業に該当します。
つまり、どちらの場合にも法人税が課税されることになります。 - 教科書や教材の販売は法人税の課税対象になるの?また、筆記用具等の文房具や制服等の販売はどうなるの?
- 学校の指定に基づいて授業に用いる教科書・参考書・問題集の販売は教育研究事業に該当する(=収益事業に該当しない)ため法人税の課税対象にはなりません。
ただし、上記以外の文房具・制服・ノート・雑誌等の販売は物品販売業に該当し、法人税の課税対象になります。 - 私立大学で企業等からの要請に基づく受託研究・共同研究の請負収入は法人税の課税対象にならないの?
- 一定の要件を満たすものについては法人税の課税対象になりません。
一定の要件については、文部科学省のホームページ(私立大学における受託研究について(通知))をご確認ください。
課税対象Q&A
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まとめ
明らかに収益事業で課税対象になるものがあるのに放置している場合は論外ですが、法人税の課税がグレーゾーンの場合は税務調査があって、議論になった時に初めて法人税の課税対象か考えることになると思います。
ここで注意しないといけないのが、必ず事前に法人税の課税対象にならない理由を用意しておくことです。
「過去からこの処理を行っており、今年も同じ処理を踏襲したので、法人税の課税対象にならない理由は過去の担当者しか分かりません。」、「新しい取引なので、法人税の課税対象か判定していません。」という話を経理担当者等から聞くことがあります。
残念ながら上記のどちらも理由にならず、もし私が税務調査官ならば、なるべく法人税の課税対象の範囲に含めて納税を促すかもしれません。
過去からの処理の引継ぎならば、きちんと正式に非課税になるための検討資料を残す(手控えの担当者ベースの引継ぎだと後で必ずなくなります)、新しい取引ならば、きちんと法人税の収益事業になるかどうか検討して正式に資料を残すことを学校法人内で徹底した方が良いでしょう。
結局、自分たちの身を守れるのは自分たち次第なので、法人税非課税の検討・資料作成作業は非常に煩雑ですが、その都度対応した方が後々税務調査時などに困らずに済みます。
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