学校法人における貸付金の処理方法を説明します

学校法人会計における貸付金

この記事のポイント
  1. 長短分類を忘れずに
  2. 徴収不能額の計算

貸付金とは?

 貸付金は教職員や学生生徒に金銭を貸付けたものです。
教職員に貸付けた場合は、例えば旅費の仮払いをした場合と区別する必要があります。旅費を仮払いにした場合は仮払金や前払金で処理しますが、教職員への貸付けは給料の前払い等です。
 学生生徒に貸付ける場合は、入学支度金を貸付けるものです。入学支度金の貸付は、入学支度金貸付制度のある学校に入学する生徒の保護者の方に、入学時に必要な費用の一部を貸付けるもので入学金のほか、授業料、実習費、施設設備費、光熱水費など、入学時に学校に支払う全ての費用が対象となります。入学支度金貸付制度のある学校は学生、生徒に対する貸付が生じることになります。
 

貸付金の処理方法

 期中は貸付金としていても期末においては長期と短期に分類する必要があります。短期貸付金は貸借対照表日(学校会計の場合は3月31日)の翌日から、1年以内に期日が到来する貸付金です。長期貸付金は貸借対照表日の翌日から、1年を超えて期日が到来する貸付金です。貸付金が分割で回収する場合は、契約が一本でも、翌期の3月31日までに回収される額を計算してその分を短期貸付金、として処理します。
 長短分類の図

長期貸付金は固定資産に、短期貸付金は流動資産に表示します。なお、長期貸付金の最終年度は残りの貸付期間が貸借対照表日の翌日から1年以内に期日が到来するため、短期貸付金として表示します。

管理方法

 貸付金を管理する場合は、相手先、貸付期間、当初の貸付金額、回収の状況、現在の貸付金額がわかる表を作成します。

徴収不能額と徴収不能引当金

 貸付金についても金銭債権で、回収ができなくなることがあるので、回収できない貸付金は徴収不能額として処理します。
 教職員に貸付けた場合は、学校に勤務している以上、給料から回収できるため基本的には徴収不能になることはない、と考えられるため徴収不能額として処理する必要はないでしょう。ただし、貸付けている教職員が退職した場合などは徴収不能になることも考えられるため、その都度判断します。
 学生生徒に貸付けた場合は、学校に所属している場合は徴収不能については考えなくてもよいものと思われます。退学した場合等は徴収不能額として処理することもありますし、特殊な事情で退学後も回収できるのであれば徴収不能額として処理しないことも考えられるので、こちらも個別の状況に応じてその都度判断します。

また、貸付金の徴収不能に備えるために徴収不能引当金を計上します。徴収不能引当金は、将来徴収不能となるおそれのある額を一定の方法によって見積もって徴収不能に備えるものです。計上する方法としては
① 個々の具体的な貸付金について徴収不能見込額見積もって計上する
② 経験則等(徴収不能実積率)に基づき合理的に貸付金額の一定割合を徴収不能の見込額として算定する
という方法がありますが、徴収不能の懸念がある貸付金には①を、懸念のない貸付金には②をという方法もあります。
① 個別に徴収不能見込額を見積もる方法
 これは貸付けた教職員、学生生徒ごとに徴収不能引当金を計上する方法です。例えばAという学生に支度金を貸付けていたが今年度に卒業したが、Aの母親がその学校の先生をしているというような場合は、回収可能性は高いと考えられるので徴収不能引当金を計上しない。Bという学生に支度金を貸付けていたが今年度に退学し支度金の返済を月々いくらとリスケジュールしたが時々返済が滞る、という 場合は、回収可能性は低いと考えられるため貸付金全額について徴収不能引当金を計上する。という方法です。

② 合理的に貸付金額の一定割合を徴収不能の見込額として算定する方法
 これは過去の徴収不能率等を一定割合として、徴収不能額の見込み額を計算するものです。

③ ①②を併用する方法
これは個別に徴収不能見込額を見積もることができる債権については個別に見積り、残りの未収入金については一定割合を徴収不能の見込額として計算する方法です。