
- 消費税の課税売上割合とは売上全体に対する課税売上高の割合です。
- 仕入税額控除(預かった消費税から差し引く仕入・経費等の消費税額)を算出するために課税売上割合は重要な役割を果たします。
- 学校法人の消費税の課税売上割合はかなり低率になる傾向にあります(納税額で簡易課税制度との比較に注意)。
- 学校法人の仕入税額控除の算定では「不課税」売上高に対応する仕入・経費等の消費税の調整が必要(特定収入の論点といいます)
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学校法人の消費税を理解するためには、課税売上割合を知ることが重要になります。
消費税の納税額の計算方法は、課税売上げに係る消費税額-課税仕入れ等に係る消費税額(以下、仕入税額控除)で計算されるのですが、仕入税額控除を算出するために課税売上割合が必要になるためです。
そこで、今回は課税売上割合とはなにかを紹介し、学校法人の仕入税額控除とどう関わってくるのかを見ていきましょう。
課税売上割合とは?
課税売上割合とは、売上高(学校法人の場合は収入)の中に含まれる消費税が課税される売上高(以下、課税売上高)の割合です。
つまり、課税売上割合とは学校法人全体の収入の中に消費税の課税対象になる収入がどれくらいの割合であるのかを示したものです。
厳密に言うと、以下の計算式になります。

課税売上割合の計算方法
各種売上高の内容を理解しよう
最初に、学校法人で登場する各種売上高(=収入)の内容を理解しましょう。
- 課税売上高…収入の中に消費税が含まれるもの(例:建物売却収入、公開講座収入、駐車場収入)
- 非課税売上高…本来は消費税課税取引ですが、教育目的等のため課税の対象にならない収入(例:授業料収入、入学検定料収入)
- 不課税売上高…対価を得るためにサービスを行っていない等、そもそも消費税課税取引にならないもの(例:寄付金収入、補助金収入)
※ 免税売上高は学校法人の場合、会計処理する機会が非常に稀なため今回は説明をパスします。
学校法人の収入の区分を理解しよう
次に、課税売上高・非課税売上高・不課税売上高に該当する学校法人の収入を確認していきましょう。
基本的には、学校法人で利用している会計ソフトの科目マスターを見れば、課税売上高・非課税売上高・不課税売上高の設定はすでに行われています。
ただし、科目マスターは一般的な学校に合わせて普遍的な設定になっており、必ずしも貴法人の実態に即しているとは限らないので、重要になる勘定科目(以下の表ぐらい)はきちんと覚えておきましょう。
大科目
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小科目
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課税
|
非課税
|
不課税
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---|---|---|---|---|
学生生徒等納付金収入
|
授業料収入等
|
-
|
〇
|
-
|
手数料収入
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入学検定料収入等
|
-
|
〇
|
-
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寄付金収入
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一般寄付金収入
|
-
|
-
|
〇
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補助金収入
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国庫補助金収入
地方公共団体補助金収入 |
-
|
-
|
〇
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資産売却収入
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施設売却収入(土地・借地権)
|
-
|
〇
|
-
|
資産売却収入
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施設売却収入(建物・構築物)
|
〇
|
-
|
-
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付随事業・収益事業収入
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公開講座収入
スクールバス収入 給食代収入 |
〇
|
-
|
-
|
付随事業・収益事業収入
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預り保育料収入
免許状更新講習料収入 |
-
|
〇
|
-
|
受取利息・配当金収入
|
その他の受取利息・配当金収入
|
-
|
〇
|
-
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雑収入
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施設設備利用料収入
入学案内書頒布収入 コピー使用料 保険事務手数料 |
〇
|
-
|
-
|
課税売上割合を計算しよう
実際に以下の設例で課税売上割合を計算してみましょう。
- 課税売上高(税抜)300円、非課税売上高1,200円、不課税売上高800円の時の課税売上割合を求めてください。
- 解答:課税売上割合は20%になります。
解説:課税売上高300円÷(課税売上高300円+非課税売上高1,200円)=20%
※ 課税売上割合の計算には不課税売上高は関係しません。
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課税売上割合の影響について
ここまでは、課税売上割合の内容と計算方法を説明してきましたが、ここからは、消費税の計算方法の中で課税売上割合がどのように関わってくるのか?を考えていきます。
消費税の計算方法について
まずは、学校法人の消費税の計算方法をみていきましょう。
消費税額 = 課税売上げに係る消費税額 - 課税仕入れ等に係る消費税額(仕入税額控除)
課税売上げに係る消費税額は課税売上高に含まれている消費税額のことです。
つまり、上記「学校法人の収入の区分を理解しよう」で記載した判定表の中の「課税」に該当する勘定科目(公開講座収入等)に対する消費税のことです。
課税仕入れ等に係る消費税額(仕入税額控除)は、学校法人が仕入・経費の支払いを行った中で支払った消費税の金額の合計のことです。
例えば、学生生徒の募集のための雑誌掲載に110万円支払った場合、10万円の消費税が含まれていますが、これが仕入税額控除の一部になります。
仕入税額控除について
学校法人が支払った消費税は仕入税額控除になる可能性ありますが、支払った消費税の「全額」が仕入控除税額に該当する訳ではありません。
消費税の計算式にある通り、課税売上に係る消費税額から差し引く訳ですから、支払った消費税額も「課税売上を稼ぐために支払った消費税のみ」を仕入税額控除の対象にする必要があります。
ではどうやって、「課税売上を稼ぐために支払った消費税のみ」を把握するかというと課税売上割合で按分するというのが答えになります。
課税売上割合は簡単に言うと、課税売上高と非課税売上高に占める課税売上高の割合でした。
そうであるならば、支払った消費税額全体に課税売上割合を乗じてやれば、「課税売上を稼ぐために支払った消費税のみ」を把握できることになります。
仕入税額控除 = 支払った消費税額全体 × 課税売上割合
厳密に言えば、上記の計算例は仕入税額控除を計算する方法の1つ(一括比例配分方式といいます)ですが、他の方法(個別対応方式)も同じように課税売上割合を利用するので、課税売上割合は仕入税額控除の計算で必要になると覚えておいてください。
学校法人の消費税の特異点
最後に一般事業会社と異なる学校法人の消費税の特異点を2つ確認しておきましょう。
課税売上割合が低くなる傾向にある
学校法人の場合、学生生徒納付金収入や手数料収入など大部分の売上高が教育に関わるもののため、非課税売上高に該当します。
つまり、学校法人の場合、全体的に非課税売上高が占める割合が大きくなります。
そうすると、課税売上割合自体も一般事業会社などよりも極端に低くなる傾向にあり、一般事業会社より仕入税額控除が少額になりがちです。
余談ながら、簡易課税制度が利用できる場合は、簡易課税制度を採用した方が消費税の納税額が少なることが多いので、注意が必要です。
なお、簡易課税制度については、「消費税の簡易課税方式とは?学校法人での本則課税方式との比較検討」で詳しく説明しているためそちらをご覧ください。
不課税売上高による仕入税額控除の調整がある
仕入税額控除(課税売上高の消費税から差し引く消費税)の計算では、非課税売上に係る仕入・経費の支払額は課税売上割合による按分をすることにより、排除できました。
ただし、課税売上割合の計算式は、課税売上高÷(課税売上高+非課税売上高)なので、不課税売上高については一切考慮していません。
つまり、仕入税額控除の中には、まだ、不課税売上高に係る仕入・経費の支払額が混在している状態です。
学校法人の場合、補助金・寄付金の影響で不課税売上高は非常に多額になる傾向にあり、仕入税額控除の中の不課税売上高に係る仕入・経費の支払額も別途調整してやる必要があるので注意が必要です。
なお、この論点については、「学校法人の消費税の計算で分かりにくい特定収入とは?」で詳しく説明しているためそちらをご覧ください。
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