
- 学校法人の法人税は基本的に安くなる傾向にあります
- 安くなる理由は①法人税の課税範囲が限定されているから、②みなし寄附金の制度があるからです
- みなし寄附金制度は①みなし寄附金の認識時点(現金主義)、②教育研究事業と収益事業の通帳の分別状況に注意!
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なぜ学校法人の法人税は安いのか?
一般事業会社の法人税に比べて、学校法人の法人税はかなり安くなるように設計されています。
学校法人の法人税が安くなる理由は、①収益事業のみ法人税が課税される、②みなし寄附金の制度があるためです。
そこで、今回は学校法人の法人税が安くなる理由を詳しく見ていくとともに、間違えると影響が大きいみなし寄附金の注意点についても触れていきましょう。
収益事業のみ法人税が課税されるとは
学校法人を行う事業には教育研究事業と法人税法上の収益事業があります。
教育研究事業は文字通り学生・生徒の教育のために行う公益性の高い事業であり、法人税の課税対象にはなりません。
一方、法人税法上の収益事業(物品販売業や請負業など)は一般事業会社と同じ内容の業務を学校法人も行う事業であり、法人税の課税対象になります。
学校法人が行う主な事業は教育研究事業です。
よって、学校法人ではそもそも法人税の金額が小さくなる傾向にあります。

みなし寄附金とは
学校法人の主な活動は教育研究事業ですが、それに付随する食堂や売店の運営・自動販売機の設置・スクールバスの運行などの補助活動は、法人税法上の収益事業に該当する可能性があります。
つまり、物品販売業や請負業などのバリバリの収益事業を行っていなくても、学校法人に法人税が課税される可能性はあります。
しかしながら、学校法人は非営利法人のため、法人税法上の収益事業で獲得された資金も最終的には教育研究事業に投資されていくことになります。
よって、一般事業会社と同じ制度で法人税を計算するのではなく、教育研究事業に投資される資金については一定の優遇措置を設ける必要があります。
この優遇措置をみなし寄附金制度といいます。

みなし寄附金の影響額
学校法人が収益事業の利益相当分の資金を教育研究事業へ内部寄付金として移動させた場合、所得金額の50%相当額(みなし寄附金が200万円を下回る場合は200万円)を限度に法人税の課税所得の計算上、損金算入が認められています。
- 学校法人の当期利益 500万円 収益事業部門の当期利益相当額(みなし寄附金) 600万円の時の学校法人の法人税の金額を計算してください。
ただし法人税率は15%とします。 - 法人税の金額は30万円になります。
計算式:(当期利益500万円-みなし寄附金600万円×50%)×15%=30万円

ちなみに、同上の条件の場合の一般事業会社の納税額は、75万円(当期利益500万円×15%)となりますので、大幅に法人税の納税額が減少することが分かります。
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みなし寄附金適用の注意点
みなし寄附金の適用には、次の2つの注意点があります。
- みなし寄附金の認識時点
- 預金通帳の分別状況について
みなし寄附金の認識時点
みなし寄附金は収益事業から教育研究事業に「実際に寄付金が支払われた時」に、経理処理・申告書記載の上、損金算入が認められます。
「実際に支払われた時」とは現金・預金を実際に収益事業が支払い、教育研究事業が受け取った時です。
つまり、みなし寄附金相当額の未払処理や支払手形処理は認められません(現金・預金決済があった時に初めてみなし寄附金として認定されることになります)ので注意が必要です。
実際に寄付金が支払われた時にみなし寄附金になる!
⇒未払処理や支払手形処理の場合、翌年度のみなし寄附金になってしまう!
預金通帳の分別状況について
みなし寄附金として認めらるためには、資金を収益事業から教育研究事業に支払うことが必要でした。
よって、教育研究事業と収益事業の口座を学校法人がきちんと持っている場合、収益事業の口座から教育研究事業の口座へ寄附金相当額を移動せず、みなし寄附金だと学校法人側が課税庁(税務署)に主張することはできません。
しかし、実務で結構多いのは、学校法人で教育研究事業と収益事業の預金口座を共用で利用している場合です。
その場合、みなし寄附金が認められるかが法人税法上非常に重要な論点になりますが、課税庁側からの明確な通達は今のところありません。
よって、事前に個別に税務署と相談した方が良い事項と考えられますが、基本的には共用の口座を利用していても、みなし寄附金は認められると思います。
あくまで私見ですが、収益事業で獲得した利益分の資金は共用の預金口座に貯蓄されるので、資金移動しなくても当然教育研究事業に使用することができると考えられます。
そうであるならば、資金移動はもとより、帳簿上も特別な振替処理をしなくても、資金の全額が収益事業から教育研究事業に寄付されている実態があると考えられます。
形式的な資金移動の有無で判断するのではなく、実態から判断すれば、共用口座を利用している場合は、現実的な資金移動がなくてもみなし寄附金として認定される可能性は高いでしょう。
- 収益事業口座と教育研究事業口座の通帳が分離されている場合⇒寄付金相当額の移動が必要!
- 収益事業口座と教育研究事業口座の通帳が共用の場合⇒税務署と一応協議しておいた方が無難(明確な基準が提示されていない)!
あとがき(参考)
本文中の「寄附金と寄付金の違いはなに?」という質問を頂きました。
- 寄附金は税務用語です。法人税上では寄附金になっているため、専門用語は寄附金で統一しています。
- 寄付金は口語です。日常生活の中で一般的に使われているものについては寄付金としています。
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