学校法人における未収入金を徹底解説
この記事のポイント
  1. 未収入金は学生生徒個人ごとに管理
  2. 徴収不能引当金の計算方法

未収入金とは

未収入金とは相手方からお金(支払資金)を受け取ることができる権利はありますが、お金を受け取っていない状態で、債権がある状態をいいます。

企業会計の場合は売掛金も未収入金と言えますが、学校の場合は通常売掛金は生じません(収益事業がある学校の場合は売掛金が発生する可能性がありますが、ここでは割愛します)。

未収入金が発生する場合

授業料は毎年受取るものですが、学生生徒が授業料を支払わない場合があります。授業料が受取れなかった場合に未収入金を計上します。学生生徒が授業を受け続けている場合は授業料を受ける権利があるため、回収漏れがないように適切に管理する必要があります。

授業料管理システムがある場合は授業料管理システムを用い、授業料を払っていない学生生徒をシステムから出力します。学生生徒数が少ない場合は授業料管理システムを用いずに管理するので十分ですが、学生生徒数が多い場合は授業料管理システムを用いる方が良いでしょう。

未収入金の管理方法

 未収入金は学生生徒別に管理します。授業料やその他の収入について学生生徒別に、この学生生徒から入手していないということを管理します。授業料管理システムを用いている場合はシステムから未入金リストをエクセル等に出力し、どの学生生徒から入金がないのかを把握します。授業料管理システムを用いない場合は前受金も同時に把握します。

 未収入金がある場合、何年前のものかを把握しておきます。例えば学生番号***1という生徒が2015年度の授業料の一部を払わずに1年間授業を受け2016年度に退学した場合、2017年度になっても2015年の授業料の未納として把握します。
 

期末の未収入金の処理

 期末に未収入金がある場合、何年度の未収入金によって構成されているか把握し、徴収不能引当金を計上するか、徴収不能額とします。

徴収不能額と徴収不能引当金

未収入金について何年度の未収入金か把握しておくと書きましたが、いつまで把握しておけば良いのでしょうか。何十年も前のも把握しておくとしたら管理表が膨大になってしまい、管理が大変になってしまいます。

未収入金については経理規定に記載があればその期間は管理しますがそれを超えた場合は回収できない債権として回収不能額とし、未収入金から減らします。もし経理規定に記載がなければ改定し記載する必要があります。

また、未収入金の徴収不能に備えるために徴収不能引当金を計上します。徴収不能引当金は、将来徴収不能となるおそれのある額を一定の方法によって見積もって引き当てるものです。計上する方法としては
個々の具体的な未収入金について徴収不能見込額見積もって計上する
② 経験則等(徴収不能実積率)に基づき合理的に未収入金額の一定割合を徴収不能の見込額として算定する
③ ①②を併用する方法
という方法がありますが、徴収不能の虞がある未収入金には①を、虞のない未収入金には②をという方法もあります。

個別に徴収不能見込額を見積もる方法

 これは学生生徒ごとに徴収不能引当金を計上する方法です。例えばAという学生は前年度の学納金の一部について未収があったものの今年度も在学して学納金を払っている場合は、回収可能性は高いと考えられるので徴収不能引当金を計上しない。Bという学生は前年度の学納金について一部未収があり今年度は退学し時々支払が遅れる、という場合は、回収可能性は低いと考えられるため未収入金全額について徴収不能引当金を計上する。という方法です。

② 合理的に未収入金額の一定割合を徴収不能の見込額として算定する方法

 これは過去の徴収不能率等を一定割合として、徴収不能額の見込み額を計算するものです。

X1年度未収入金1,200,000円 徴収不能額30,000円
X2年度未収入金1,500,000円 徴収不能額20,000円
X3年度未収入金1,000,000円 徴収不能額50,000円
の場合、徴収不能額の実績率は
X1年度2.5% X2年度1.33% X3年度5%
3年平均は2.9%
X4年度未収入金 1,300,000円 
→徴収不能見積額 1,300,000円×2.9%=37,700円
(徴収不能額と未収入金合計額を平均して実積率を求める方法も考えられます)

③ ①②を併用する方法

これは個別に徴収不能見込額を見積もることができる債権については個別に見積り、残りの未収入金については一定割合を徴収不能の見込額として計算する方法です。