
- トップダウン型のリスク・アプローチによる内部統制の構築
- リスクには金額的重要性と質的重要性の2種類がある
リスク・アプローチとは
組織は、事業を行うにあたり様々なリスクに晒されていますが、当該リスクの発生を合理的に低い水準に抑えるために、重要な業務に係るリスクを評価し、リスクが発現しないような内部統制をデザインし、それを運用することを、リスク・アプローチによる内部統制といいます。
トップダウン型のリスク・アプローチ
リスク・アプローチには、全社的な内部統制が有効に機能していることを評価し、その結果を踏まえてどの箇所に重要なリスクが存在しているのかを評価して、内部統制が必要な業務プロセスを絞り込んでいくトップダウン型のリスク・アプローチと、様々な業務のリスクをその業務フローから個々に検討することで、業務フロー全体のリスクの程度を評価し、そのリスクが組織全体の重要なリスクとならないように、内部統制を整備および運用していくボトムアップ型のリスク・アプローチがあります。
一般的には、トップダウン型のリスク・アプローチが採用されることが多いですが、これは経営者が組織の業務全体を見渡した時に、どのようなリスクが発生しやすいのかを経営者の立場から総合的に判断することで、組織全体で効果的かつ効率的な内部統制が整備および運用されることが期待されるためです。

重要性の考え方
リスクの考え方として、金額的重要性に応じたリスクと質的重要性に応じたリスクがあり、当該リスクを比較衡量することにより、内部統制の整備および運用に関する経営資源の投下を判断することが考えられます。
例えば、組織全体で検討したときに、収入の部について、現金が流入することから他の業務と比較してリスクが高いと判断することがあります。その中で、収入の部の金額のうち、学納金が9割以上の金額を占め、その他の収入が1割程度となる場合、金額的重要性の高い学納金に関して優先的に経営資源を多く投下することにより、収入の部の金額について、効果的かつ効率的な内部統制を構築することが可能となります。さらに、学納金の金額のうち一般的な振込による入金に関するフローを重要な業務フローとした場合には、当該フローについて、十分な内部統制を整備および運用することが重要となると考えられます。
一方で、その他の収入が現金の持ち込みによる寄付の場合、担当者が現金を直接取り扱うこととなるため、担当者が寄付を横領してしまうという不正を行う機会(リスク)を有してしまっていると考えられます。この場合、不正が行われるリスクは一般的な学納金よりも高く、質的重要性が高いと考えられることから、当該リスクに対応する内部統制を整備および運用することが考えられます。
このように、経営者は限られた経営資源の中から、金額的重要性だけでなく質的重要性に応じたリスクについて検討し、内部統制を整備および運用することが肝要となります。
