
- 収益事業には、①「私立学校法上の」収益事業と②「法人税法上の」収益事業の2つがあります。
- 「私立学校法上の」収益事業は計算書類の区分に影響します。
- 「法人税法上の」収益事業を把握するために、「私立学校法上の」収益事業(計算書類の区分)は大きな影響を与えます。
- 「法人税法上の」収益事業の把握には事業活動収支計算書の小科目、つまり、①補助活動収入、②附属事業収入、③受託事業収入、④雑収入を特に注意してください。
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学校法人に対する法人税の課税対象とは
学校法人に対する法人税の課税対象は「法人税法上の」収益事業です。
つまり、「法人税法上の」収益事業から生じた所得に税率を掛けたものが学校法人の法人税額になります。
そして、学校法人には「法人税法上の」収益事業のほかに「私立学校法上の」収益事業という概念もあります。
両者の登場場面が全く異なれば良いのですが、学校法人の法人税では、「法人税法上の」収益事業と「私立学校法上の」収益事業両者がセットで登場してしまい、そもそも収益事業とはなんなのかを混乱してしまいます。
そこで、今回は「法人税法上の」収益事業と「私立学校法上の」収益事業の違いを明確にし、あわせて学校法人の法人税の計算をするときの注意点を挙げていきたいと思います。

私立学校法上の収益事業とは
「私立学校法上の」収益事業とは寄附行為(≒一般事業会社でいう定款)にその内容を記載し、所轄庁の許可を受けたもので、文部省告示で定めらたものです。
学校法人の中でも「私立学校法上の」収益事業を行っている法人は限られています。
教育研究事業を行うことを主な目的としている学校法人で、大規模に収益事業を行うことは考えにくいからです。
また、売店や食堂の運営事業や教室の貸し出し事業などは、教育研究事業に付随して行われる補助活動に分類され、「私立学校法上の」収益事業としません。

私立学校法上の収益事業の決算書について
学校法人では、貸借対照表・資金収支計算書・事業活動収支計算書などを毎年作成しますが、それとは別に「私立学校法上の」収益事業だけを切り離して、貸借対照表と損益計算書を別個作成する必要があります。
「私立学校法上の」収益事業については、通常の学校法人会計基準に準拠するのではなく、一般事業会社と同じように企業会計基準に準拠して貸借対照表や損益計算書が作成されることになります。

法人税法上の収益事業とは
「法人税法上の」収益事業は①政令で定める事業で、②継続して、③事業場を設けて行わるものをいいます。
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収益事業の違いについて
「私立学校法上の」収益事業は文部省告示で定めらた18事業に限定されており、「法人税法上の」収益事業は政令で定められた34事業です。
両者は定めらた機関が違うので、当然すべてが一致するわけではありません。
- 「私立学校法上の」収益事業に該当〇 「法人税法上の」収益事業に該当× 例:農林漁業
- 「私立学校法上の」収益事業に該当〇 「法人税法上の」収益事業に該当〇 例:駐車場貸付等
- 「私立学校法上の」収益事業に該当× 「法人税法上の」収益事業に該当〇 例:食堂や売店等

つまり、上記の②と③が法人税の計算に関係してくることを理解しておいてください。
法人税の計算方法
法人税の計算をするためには、「法人税法上の」収益事業を把握して、それに見合う金額を抽出しなければなりません。
「法人税法上の」収益事業を把握・抽出の仕方は以下のような方法が考えれます。
- 損益計算書から「法人税法上」の収益事業を把握する
- 事業活動収支計算書から「法人税法上」の収益事業を把握する
損益計算書から「法人税法上」の収益事業を把握する
「私立学校法上の」収益事業に該当する事業がある場合、企業会計基準に準拠した損益計算書を期末日以降作成しています。
その損益計算書の中から、「法人税法上の」収益事業に該当する金額を抽出することになります。
上記2.の「私立学校法上の」収益事業に該当〇 「法人税法上の」収益事業に該当〇の分類を思い出してください。
事業活動収支計算書から「法人税法上」の収益事業を把握する
「私立学校法上の」収益事業に該当しない事業でも、「法人税法上の」収益事業に該当する事業があります。
事業活動収支計算書の①補助活動収入、②附属事業収入、③受託事業収入、④雑収入の小科目の中から「法人税法上の」収益事業に該当する事業の金額を抽出することになります。
上記3.の「私立学校法上の」収益事業に該当× 「法人税法上の」収益事業に該当〇を思い出してください。
法人税計算の注意点
実務上注意が必要になるのは、「私立学校法上の」収益事業に該当しない事業で、「法人税法上の」収益事業に該当する事業の抽出方法です。
すなわち、事業活動収支計算書の①補助活動収入、②附属事業収入、③受託事業収入、④雑収入の小科目の中には法人税の課税対象になる可能性が高いにも関わらず、課税の有無を検討をせず放置されている事業が多いということです。
①そもそも政令で定めらた34業種に該当しないのか、②継続しない事業なのか、③事業場がないのか等、法人税の課税対象にならないことを一つ一つ検討し、きちんと文書化して残す必要があります。
会計監査・税務調査の時に説明がつかなければ、当然過去から遡って処分されることになり、場合によっては、学校法人のイメージにも傷がついてしまうかもしれませんので注意が必要でしょう。

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