全社的な内部統制と業務プロセスに係る内部統制の違いとは
学校法人の内部統制は主に2つに分類することができる
  1. 全社的な内部統制
  2. 業務プロセスに係る内部統制

全社的な内部統制と業務プロセスに係る内部統制

全社的な内部統制とは、財務報告を含む組織の業務プロセス全体に影響を及ぼすような内部統制をいいます。一方で、業務プロセスに係る内部統制とは、組織の各業務プロセスに組み込まれ一体となって遂行される内部統制のことをいいます。

例えば、全社的な内部統制には、経営者が適正な財務報告を行うことを重要視していることを全社的に通達し、そのことを行動指針に反映し公表していることがあります。これにより、組織全体の構成員に対して、経営者が適正な財務報告を行うことを重要視していることを理解してもらい、業務を誠実に遂行するように促すことが出来ることとなります。

一方で、業務プロセスに係る内部統制には、経理部は資産の購入先から請求書を受領した場合、当該資産が適切に購入されているかについて、購入部署に問い合わせを行い、適切に納品されていることを確認してから支払いを行うといったものがあります。これにより、資産の購入プロセスおよび支払プロセスの正確性を担保することが可能となります。

このように、全社的な内部統制は組織に属するすべての部署に対して実行されるような内部統制のことをいい、業務プロセスに係る内部統制とは、ある特定の業務プロセスに対して実行される内部統制のことをいいます。

全社的な内部統制の具体的な項目

全社的な内部統制は、組織の内部統制の基盤となる内部統制のため、一般的には内部統制の基本構成要素にある①統制環境、②リスクの評価と対応、③統制活動、④情報と伝達、⑤モニタリング(監視活動)および、⑥IT(情報技術)への対応の6つ項目を網羅的にカバーする必要があります。一方で、組織の全体に影響を与える内部統制であることから、どの組織の業務にも共通する事項である組織体制や規程等の整備に重点が置かれています。このため、上記6項目に対する組織体制や規程等の整備が適切に行われているかが主な項目となります。

例えば、統制環境について、経営者は組織内の各部署について、職務の役割分担を適切に定めているかについて、職務分掌規程を規定しており、当該職務分掌規程にのっとった業務がなされていること、情報と伝達について、重要な金額の購買を行う場合について、経営者は稟議規程等を規定しており、当該稟議規程に応じた稟議書を作成し、承認が行われていることといった内容があります。

業務プロセスに係る内部統制の具体的な項目

業務プロセスに係る内部統制は、学納金に係る業務や購買に係る業務といった組織の業務プロセスに組み込まれている内部統制のため、一般的には学納金であれば学納金、購買であれば購買といった個々の取引フローに合わせた内部統制の整備および運用が行われています。このため、個々の取引フローにどのようなリスクが具体的に存在し、そのリスクを低減するためにどのような内部統制が整備および運用されているのかが主な項目となります。

例えば、学納金が適切に入金されないリスクを想定した場合には、経理部において、入学予定者のリストを準備し、入学予定者から実際に入金をしたという納付書を経理部に送付してもらい、その納付書と入学予定者のリスト、銀行口座の入金データの突合を行うことで、学納金が適切に入金されているかを確認するといった業務を行うことによりリスクを低減できる内部統制が整備および運用されると考えられます。